福祉有償運送における運営協議会の問題点と行政職員の弱点

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2018年3月現在、全国で福祉有償運送を行っている団体は2400団体、公共交通空白地有償運送を行っている団体は116団体である(国交省調べ)。公共交通空白地有償運送の実施団体数が極めて少ないばかりか、かつて同様の福祉有償運送を全国で約3000団体が実施していた事からすると、ほとんど増えていないのが現状である。その最大の原因となっているのが、運営協議会の合意が登録要件になっている法制度の欠陥にある。

「運営協議会問題」
運営協議会は、単独もしくは複数の市町村長が主催し、①タクシー事業者②住民または旅客③運輸支局職員④タクシー労組⑤福祉有償運送実施のNPO等で構成。この運営協議会で「法定3事項(=①必要性②運送区域③対価の基準)」について、登録や更新時の合意を要するという仕組になっている。このことにより、「移動制約者の実態を踏まえ、タクシー、住民団体、NPO等、多用な主体が協力しあいながら、「地域の足」「移動の自由」をどう確保していくか」という運営協議会の本来的目的が抜け落ちているという現状である。
また、全国各地の運営協議会で、ローカルルール(上乗せ基準)が存在し、これを団体が遵守しなかれば合意しないといった他事考慮的判断が行われることによって、移動支援団体の活動が制約・限定化されている。例えば、セダン型車両の使用は認めない等の恣意的なローカルルールが、全国各地の運営協議会で設けられてきた。国交省は2009年、「運営協議会において定められた独自の基準に対する考え方について」等、2回に渡り通達を出しているが、いづれも現場には余り大きなインパクトを与えたとは言えず、僅かな改善のみで大勢には影響なかった。
総じて多くの自治体では事業者の主張に対しては弱腰で、自治体職員は一般に交通制度に詳しくなく、交通政策を推進する体制も出来上がっていず、福祉と公共交通の関係部局の連携も不充分である事から、複数の自治体でブロックでの運営協議会では、一掃無責任な対応となった。

KSKR(移動・送迎支援活動ニュース) 通巻8028号 「2019福祉有償運送学習会・道路運送法改正から13年、今後の課題を探る・九州大学大学院法学研究院教授」の文章を拝借引用(一部、弊ブログ筆者にて改訂してあり、KSKRおよび教授のご主張とは完全一致していない可能性を含みます)