根強い支援者側の自己責任論と真の社会変革

様々な福祉職

弊会の活動柄ゆえ、介護保険におけるケアマネさんや、生活保護課のケースワーカーさんなど、様々な福祉系の人と話す機会があります。

この方々は、決まった制度の中で、決まったサービスを提供するものであり、その制度の中における相談支援は期待できますが、生活困窮や権利擁護という分野においての対応の限界は止むを得ないでしょう。

相談支援職の実例


そして、これも結局は制度の中ですが、「相談支援」を本業とする人々との会話の中で驚く発言がありました。発言を要約すると、「私は努力して今の職にある」といった内容です(会話の前後を説明すれば更に明確ですが割愛します)。優越意識か、選民思想かと驚愕してしまった私が、堪まらなくなってツッコミを入れると、いろいろ弁明されましたが、弁明を聞いていて更に、もうこれは本心であるに違いないと、現場の只中に身を置く筆者は、そう感じざるを得ませんでした。
この人は(困窮/障害/その他の)当事者でこそないけれど、同じ内容を学んでいて、構造を知っている筈であり、その上でこの意識レベルなのかと、開き直りの達人である筆者も、それは本当に落ち込みました。

努力と環境が揃って

努力を否定しているのでありません。その人は本当に努力したのです。だからこそ今の地位(職)にあるのは事実です。
一方で、努力しても報われない人があるのも事実です。

また、よくある万分の一の確立な「成功者」を例に、万人に自己責任論を押し付けられては、それも溜まったものでない。

一般例として、じっくり大学入試に向き合える、勉強部屋(家庭環境)、経済的余裕(家庭環境)、大学に安心して通える経済的余裕(やはり家庭環境)、そして本人の努力(を遂行できる健常な自己環境)、これらが上手く融合してこそ、成功に繋がるのでありませんか。
同じ成功を目指すにも、前述内容に充分恵まれた人と、過酷な環境から挑戦する人では、成功率に差が出ること明白です。
具体例を挙げるなら、生活保護世帯の子ども達は、大学進学を許されていません。それでも進学を望むなら、「恵まれ派」の何倍もの苦労を強いられます。

或いは、他の福祉分野に従事しつつ学校に通って、支援職になった人もあります。必ず言うでしょう「私の努力で勝ち得た」と。何らかの支えてくれる者があったでしょう、体力に恵まれたのでしょう、完全独力など有り得ない。そう伝えるつもりです。筆者が社会福祉主事を得たのは、福祉制度のオカゲであったように。何らかの支えなく遂行できる物なぞないと思いませんか。

支援構造の実態と階級固定と制度の限界に


これらから見えてくる事は、支援する側が支援される側のあなたを「調度いい案配」に収めてしまう危険性を常に孕んでいるという事です。

あなたは低学歴で資格が無いから、あなたは障害病弱だから、ここら辺が丁度いい、といった案配です。
低学歴なのは、資格がないのは、障害や病弱なのは、あなたの責任でない。進学を望むべくもなかった環境に居た。中退せざるを得ない事態があった。

高度な理屈を並べられて、調度いい処に収められて、それをあなたが良しとするなら、これは一番「調度いい」案配です。

しかしこれだと、階層移動が実現しないかも知れません。

自己責任論に納得しておらず「調度いい案配」に収まりたくないなら、是非そこは抵抗して下さい。望む職業に学卒や資格要件があるのなら、それを与えろと要求して下さい。

制度の限界を超えた社会変革を

恵まれた者は、その恵まれを持って、資格を得、支援職になる。望まずに恵まれず支援される側が、恵まれを新たに与えられることなく、似たような階層に落ち着かされる。

これの典型が生活保護制度における自立支援です。こんなものは悪辣なる階級固定策でしかない、どうぞ頭の片隅にでも置いて下さいませ。

支援側が、思いもよらず自己責任論を保持しているのなら、それを跳ね返すのもアリです。どうか、あなた自身を諦めないで。

そのためには、制度の限界を見極める事でしょう。国から委託されて、つまり血税を与えられて、職業として運営される組織、職業として従事する資格者、介護や医療と違って、あなたの生活基盤を支援する者が国家の縛りにある限り、あなたの望みを実現しようがない。
ここを見極めながら支援の享受と俯瞰を並行して下さい。

当事者が自ら考えはじめれば、この制度の限界を超えて、本物の社会変革が近づくかも知れません。

筆者が学んだ大学の先生の一人が「調度いい派」でした。講義後の休憩時間、執拗に質問して食い下がる筆者に対して、「君はコンソウ(困窮相談)系やってるやろ?」と言われたのを思い出します。筆者の反対派ですが素敵な先生でした。

我がごと丸ごと地域共生社会と自己責任論
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