[ 設問 ]
生活保護法第4条における「補足性の原理」の扶養義務の優先の問題・課題についてまとめなさい。
[ 解答例 ]
扶養義務の優先の問題として、一方で、利用当事者の側から見た場合の一例として、現状では権利性が弱く市民の理解も進んでいない制度であるから、扶養照会に始まる一連のシステムは、迷惑を掛けたくない・恥をかきたくない等のある種スティグマを生む可能性がある。また一方で、扶養義務者側から見た一例として、突如として扶養照会なる文書が役所から届き、世帯構成や資産収入状況などの開示を要求され、当事者とは違う角度のある種スティグマを抱える可能性がある。結果として、双方から受給抑制の可能性が出る。もう一方で、これらから、当事者と扶養義務者に不要な軋轢を生む可能性もある。
又、DVに代表されるように照会により、知られたくない者へ居所や状況が伝わってしまい、身辺の危険性を生む事や、表面上は良好な親子関係に見えても、実は違う場合(親が扶養を承諾し、子はそれを恐れる)、却って当事者の自立を削ぐ可能性が出たりもする。
これは、個人化の進む中で、生活保護制度が現状にそぐわない家族主義的な側面を持続させているのが原因と考える事も出来るだろう。
そしてその課題として、一つは、扶養義務が保護受給の要件であるとの誤解を与える運用を正すという角度。一つは、生活保護法と場合によっては民法を、現状に合わせたものに改正するという角度。一つは、生活保護制度の正しい知識を市民に啓発するという角度などを、並行して進める事などが挙げられる。